JV11-V005
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勝利万歳
ジーク・ハイル!!
機動龍騎兵 蒼龍 第27話 - 原作:神無月とし 文:人龍 時宗
2009/03/07 (Sat) 04:52:49
清泉学園校庭。
生徒が体育の授業で身体を動かしている。
理事長の神月としは校庭の隅のベンチでくつろいでいる。
体重100kg近い巨漢で腹も出ているが、だらしない肥満という訳ではなく、貫禄のある風貌で意外に
生徒にも人気がある。
そこに剣がやって来た。
「休憩ですか? 閣下」
「ちょっとね」
剣もベンチに腰掛け、缶コーヒーのプルトップを開けた。
晴れた空にそよぐ風…心地良い木陰。
「のどかだな…」
剣はつぶやく。
「グロウル総統の閣下が言われると、実に感慨深いですなぁ…」
神月が唸る。
「…そういえば、グロウルで思い出したのですが…」
「閣下はドーソンと戦ったのですか?」
神月は親友であり戦友であるトレント・ドーソン大佐(ヴァンガード参照)の事を思い出しつつ、剣に尋ねた。
「ああ…戦ったよ…私の負けだがね…」
剣はそっけなく答えた。
「おお!」
神月は驚いて目を見開いた。
「私は負けた…しかし、それはユーノフラテスの創造者の意思によって書かれたシナリオだったのさ…」
剣はやるせない口調だ。
「それは…どういう事でしょう?」
神月は剣の意外な発言にさらに驚いた。
「少将はこの世界にどうやって来たのかね?」
剣は逆に神月に質問した。
自分の疑問を置いていかれたまま進む会話にいぶかりつつも、神月は答えた。
「基地で地震に遭って…気が付いたら、蒼月家の庭に倒れてましたよ」
「ふむ」
剣は頷いた。
「私とドーソンはユーノフラテスの創造者…「神」とでも呼ぶべきかな? に選ばれた者だったのだ」
「その「神」の孫娘(ユキ・ミナヅキ)の死を看取る最高の騎士としてな…」
神月はあまりにも非現実的な話に驚き続けたままだ…
さらに剣は話を続ける。
「ユーノフラテスは騎士…つまりヴァンガードを選ぶために作られた世界だったのさ…」
「だから、神の孫娘を我々が看取った後に、存在が不要になって地震で崩壊したのだろう…」
「うーむ…」
神月は自分の疑問がほんの僅かだが解消したことに唸った。
「…」
「…」
しばらく二人の沈黙が続く…
「…来ますね…」
神月が何かを察知したようにつぶやいた。
「…少将も気付いたか…エースの勘は鈍っていないようだな…」
剣も同感のようだ。
「生徒を「避難訓練」と称して退避させます」
神月はポケットから携帯を取り出す。
「様子を窺いたい…私はここに残るとするか」
剣は立ち上がって空を見上げた。
校内にサイレンが鳴り響いた。
剣の表情は、かつて「黒い皇帝」と呼ばれていた時の鋭さを取り戻した…
蒼月家、蒼天流道場。
座禅を組んでいた源司は、カッ!と眼を見開いた。
「来る!!」
「…尻は青いが、心意気のありそうな奴じゃな!!」
「刃龍も漆黒も純粋な男に弱いからな…うわっはっはっ!!」
豪快に笑うと、掛け軸を捲って隠し扉を開き、旧帝国海軍の飛行帽を取り出した…
木造2階建てのボロアパート。
メタボ予備軍体型の坂東 相模(トレント・ドーソン)は、お茶を飲みながらのんびりと
ラジオを聞いている。
ラジオに一瞬ノイズが入ったのを聴いて、坂東は唸った。
「…来る!!」
「えー? おじさん何か言った?」
台所からポニーテールを揺らしながら、中島 昴が顔を覗かせた。
坂東はぎゅっと昴を抱きしめて言った。
「始まるんだよ…戦闘が…また人が死ぬんだ…」
昴は坂東の胸に顔をうずめて言った。
「死んでいく人の事を真っ先に想う、おじさんの繊細さが好き…」
機動龍騎兵 蒼龍 第26話 - 原作:神無月とし 文:人龍 時宗
2009/01/17 (Sat) 22:10:37
浦木重工MS工廠。
バイオ1号機の修復が急ピッチで行われている。
洸もパイロットスーツのまま、ベンチで待機している。
フレームの調整のためにすぐにコクピットに乗り込めるように。
もちろん、待機中もノートPCを膝に乗せてコクピット周りの機材の調整だ…
しかし…皆の表情には焦りが見える。
バイオは複雑な機構によって高性能を引き出すMSであり、ハイテクの塊であるとはいえ、
各部の調整にはまだまだ職人芸が必要とされるのであった。
『このままでは、ルミノソ・ティグレの襲撃に間に合わない』
誰もが不安に囚われる。
クリス技術中尉も不安げにノートPCのキーボードを叩いていたが、何かを閃いたらしく、
急にキーを叩くスピードが上がった。
「…これなら…いける…!」
拳を握り小さくガッツポーズをとると、携帯を取り出し通話した…
洸はベンチで疲れた目をこすりながらため息をついた。
『困った…AMBACとフレームの連動同期が取れないな…』
「浦木少尉」
「はい」
洸は呼びかけに応じて振り向くと、そこにはクリス中尉と原田技研のビゲン技術曹長が居た。
「少尉、今すぐに2号機を分解してフレームを1号機に使って!」
「?!」
「しかし…2号機からパーツ取りをしてしまっては、中尉の乗るMSが…」
洸は焦った。
今は1機でも多くMSが欲しいからだ。
「私は…ヴェルトロbisのフレームと2号機の装甲、それと3号機のウェポンポッドを頂くわ!」
クリスは微笑んだ。
「曹長、説明お願い」
「はい」
ビゲン曹長は直立不動で応えた。
「まず、ヴェルトロbis B型(スラスター強化型)のフレームに2号機の装甲を取り付けます」
「取り付けにはすでに用意されたブラケットを用います、強度の低下は約20%です」
「次に3号機(拠点防衛用仕様)のウェポンポッドを取り付けます」
「ヴェルトロbisのジェネレーター出力の関係で実弾系武装のみになります」
「運動性能の低下は加速と最高速は約15%、旋回性能は約30%の低下です」
「運動性能と装甲をヴェルトロbis A型(通常仕様)と比較しても、ほぼ同等、火力はヴェルトロbisの
どのタイプと比較しても最強です!」
「名付けて…『ヴェルトロbis改』どう…? 格好良いじゃない!!」
クリスはまた微笑む。
「我々原田技研は、ヴェルトロbisについて、『汎用性の追及』をモットーのひとつに挙げています
!」
「汎用性の適応対象として、バイオも視野に置いた開発も進めてきました」
「2時間もあればクリス中尉がコクピットの乗れるように調整します!」
ビゲンは頭を下げた。
「少尉…プロジェクトバイオの主任として作業の許可をお願いします!!」
「…よし…解った、よろしく頼む」
洸は重苦しい表情で答えた。
「はい! ありがとうございます!!」
ビゲンは敬礼すると、クリスと共に小走りで去った。
洸は拳で壁を叩いた。
非常事態とはいえ、自分の会社の人間をベストなMSに乗せられない事に怒りを感じた…
保守します… - 人龍 時宗(管理人)
2008/11/02 (Sun) 00:15:24
いいかげん保守しないと板を消されそうで怖いw
機動龍騎兵 蒼龍 第25話 - 原作:神無月とし 文:人龍 時宗
2008/07/21 (Mon) 03:46:02
清泉学園の職員室。
剣(ケーン)は自分の机に肘をついて思案する…
『…ちょっと状況を整理しておこう…』
『ルミノソ・ティグレの次の狙いは何か…?』
『表向きには「死の商人を粛清する」という事らしいが…』
『ただ単に粛清したいだけなのならばバイオを奪取する必要はないし、そもそも
テロを行う必要もない…適当な不正取引をでっちあげてWTO(世界貿易機関)
にでも告発すればいいだけの話だ…』
『…となると…やはりこの前に蒼月元中佐の言っていた、機械島に封印されて
いる刃龍が狙いか…』
『元中佐は「これから、龍騎兵をめぐる戦いが起きるであろう…」とも言っていたしな
…』
剣はさらに考えた。
『もし…刃龍がルミノソ・ティグレに奪われたらどうなる…?』
『浦木少佐も蒼月元中佐も龍騎兵を封印してしまったようだし…』
『…待てよ…「破壊」とか「処分」ではなくあくまでも「封印」か…』
『姫…姫のご意見を伺いたい』
剣は自分の守護霊のユキ・ミナヅキを呼ぶ。
『ふふ…いつも難しい話ばかりね…ケーンは』
白いドレスの少女が剣の意識に現れる
病を患っていたため頬がこけるほどの痩身ではあるが笑顔は明るい。
『ええ…ユーノフラテス(ヴァンガード参照)もこの世界も簡単には出来ていない
ようなので…』
剣はユキを抱き上げて微笑む…俗に言う「お姫様だっこ」だ…
ユキは剣の笑顔が心の底からのものではないことを知りつつも嬉しかった。
だから剣が好むようにわざとストレートな表現を避けて答えた。
『私のお婆様もそうだったけど人は自分の色々な物を子孫に残そうとするもの
よね…』
『なるほど…!』
剣は感嘆する。
ユキは自分の言葉で剣が結論を出してしまった様子を見て、嬉しくもありつまらな
くもあった…
ユキは剣に抱かれたまま剣の頬をつねって言った…
『もっと私を頼りなさい…』
剣の机の電話が鳴った。
「はい、剣です」
剣は電話に出た
「神月です」
清泉の理事長の神月としからの電話だ。
「閣下…下山教諭にご家族の不幸があって早退されたので、1-Bを臨時に見て
いただきたい」
神月は剣を「グロウルの黒い皇帝」ラーハイド・ケーン総統として敬意を
持って「閣下」と呼んだ。
「自習にしてかまわないかね?…少将」
剣は神月を「ブラモの青騎士」トシ・ウラキ少将として敬意を払って「少将」と
呼んだ。
2人は以前に死闘を演じたエースパイロット同士でもある。(ヴァンガード参照)
「はい」
神月は答えた。
「了解…すぐに行こう」
剣は受話器を置き、立ち上がってノートPCを小脇に抱えた。
1-B教室。
剣が教室に入ると同時に、生徒の黄色い悲鳴が上がる。
引き締まった身体を黒いスーツに包み、長い銀髪を揺らして歩く剣の姿は一見すると
ビジュアル系バンドから抜け出して来たかのように見える。
「うわー…カッコイイ先生だね、薫ちゃん?」
命は無邪気に隣に座っている薫に話しかける。
「ぇ… ええ… そうね…」
薫は困惑しつつなんとか応えた…
薫は命のように芸能人を見るような目で剣を見ることができなかった…
そう、あまりにも剣の眼光が鋭く、今は亡き祖父の洸明や、源司に似ているからだ…
薫が教室を見回すと、実も薫と同じような事を考えていたらしく、真剣な表情で剣を
見つめているのが見えた。
「静かに」
剣は穏やかに言った。
生徒はさっと静かになった。
「今日、初めて会う人もいるだろうから自己紹介させていただく」
「私の名は「剣 廃土」」
「一応、専攻は古文だが…私は少々記憶喪失だから過去の記憶が途切れている…」
「だから、実質的にはみんなと一緒に勉強していく事になる」
「自分の過去の記憶は無くとも、人類の過去の記憶から学ぶものはあると思ってな…」
「たとえば…」
「蒼月君…「矛盾」という言葉を知っているかな?」
剣は一番前の席に座っている命に話しかけた。
命は答えた。
「えーと…昔の中国で「どんな盾も突き抜く矛」と「どんな矛も防ぐ盾」を売っていた
人が、客に「その矛でその盾を突いてみろ」ってツッこまれる話ですよね?」
命は答えた。
「そうだ…」
剣は頷く。
「この「矛盾」を「辻褄が合わない物の例え」としてだけでなく自分の今やっている
事に当てはめて考えるのも面白いものだぞ」
「そう…特に、蒼月、浦木、原田の三人は「矛盾」を心に留めておくといい」
蒼月、浦木、原田の三人は剣の発言の意図が理解できなかったが、「矛盾」という
言葉は深く脳裏に刻まれた。
「先生ずるい! 私にも何か教えてよー!」
双子の宮内姉妹が同時に声を上げた。
毎度の事ではあるが、双子のシンクロ発言に教室は笑いでどっと沸く。
「…賑やかでよろしい」
剣は頷いた。
機動龍騎兵 蒼龍 第24話 - 原作:神無月とし 文:人龍 時宗
2008/04/29 (Tue) 06:40:00
洸が辞した後、アドラーはコーヒーを飲みくつろぐ…
腕のジン156Bをちらりと見る…
「そろそろ原田曹長が来る頃だが…」
噂をすれば何とやらで、ドアがノックされた…
「どうぞ」
「失礼します」
実が花束を持って見舞いに来た。
「具合はどうですか?」
美しく咲いたテッポウユリに負けない笑顔で実は花束を花瓶に活ける。
「痛みはだいぶ鎮まったよ」
実の様子を見てアドラーの表情が緩む。
「何か必要な物はありますか?」
実はアドラーを見つめる…
「いや…無いな…」
アドラーは応えた。
しばらくの沈黙があった後、実はぐっとアドラーに身体を寄せて言った。
「あの…」
「男の人って…生理現象を定期的に処理しないといけないんですよね…?」
「私で良ければ…」
「…?」
アドラーはしばらく思案していたが、実の言いたい事に気付いた。
「ああ…気を使ってくれてありがとう」
「しかし…私はこう見えてもモテる方なんだよ…」
「…そうですか…そうですよね…」
実はうつむき、肩をすぼめる…
ついさっきまで元気だった実が自分のひとことですっかり落ち込んで
しまった様子はアドラーにとって見るに耐えない…
「お大事に…失礼します…」
実はそそくさと帰ってしまった…
「…」
アドラーは苦々しげな表情で腕を組む…
しばらくしてドアがノックされた。
「どうぞ」
アドラーが応えると、識部教授が入って来た。
白衣に作業ズボンといういでたちの中肉中背の中年で
どう見ても天才科学者には見えない。
「いかんなぁ…女の子を泣かせてしまっては…」
識部が腰に手を当てて言った。
「不器用なんでな…」
アドラーはため息混じりに苦笑いする…
「私は軍人だ…いつ死ぬがわからん…」
「恋愛などすべきではないんだよ…」
真剣な表情でアドラーは語る。
識部はアドラーの言葉をすかすように言った。
「彼女も一応、軍人だけどな…」
「それに…彼女、言ってたなぁ…」
「『いつ死ぬか解らないからこそ、今を精一杯生きたい』ってね…」
「…!」
アドラーは、はっとした…
「歳のせいか…どうも思考がネガティブになっていかんなぁ…」
苦笑いしつつ、頭を掻く。
「なーに…彼女にはそれとなくフォローを入れておきましたよ、大尉」
識部はニヤリと笑う。
「それはそうと…例のブツがあと数日で出来上がるよ」
識部はついさっきとは違う笑みを浮かべる。
「おお…それはありがたい!」
「ルーデル大佐の後輩になれないのは残念だがね…」
アドラーも識部と同じ笑みを浮かべる。
機動龍騎兵 蒼龍 第23話 - 原作:神無月とし 文:人龍 時宗
2008/03/08 (Sat) 05:27:51
病院…
白いカーテン越しの日差しを浴びつつ、アドラーはノートPCに向かい、メールを
チェックする。
「うーむ…今日は見舞いが多いな…退屈しないで済みそうだな」
さっそく、ドアをノックする音がした。
「どうぞ」
アドラーは応えた。
一人目の見舞いは、浦木 洸晴(うらき こうせい)であった。
複合企業体浦木グループの総帥であり、洸と薫の父親だもあるが、外見は学者か
弁護士をイメージさせるような痩身の美男子だ。
「身体の具合はどうかね…大尉」
「私の息子が君に苦労をかけてしまったようで申し訳ない…」
洸晴はアドラーに頭を下げた。
「僚機を守るのは長機の務めですよ…」
アドラーは静かに笑って応えた…
「たとえ私が無傷で、敵機を墜としたとしても、僚機を墜とされたらその戦闘は
負けです」
「それがパイロットの掟なんですよ」
「ふむ…」
洸晴は感嘆した。
「ところで…」
「今日は手ぶらで見舞いに来てしまったのだが、なにか欲しいものはあるかな?」
洸晴はアドラーに尋ねた。
アドラーはニヤリと笑った。
「実は…面白い情報があって…」
「MS一個小隊とブラヴィア(強襲揚陸艦)を貸していただきたい」
「!!」
洸晴は突拍子のないアドラーの申し出に驚いた。
驚く洸晴にアドラはノートPCのディスプレイを見せる…
「これは…」
ディスプレイを見た洸晴はさらに驚く。
「今の騒動が片付いたら、彼らに協力しようと思うのですが…」
「面白い話だと思いませんか?」
アドラーは洸晴を試すような表情で笑う。
「しかし…彼らは我々の協力の申し出を受けるかな?」
洸晴は眼鏡のフレームに手を当てる。
「ふふ…バイオとサイバーを貸すと言われて断るパイロットはいませんよ」
さらにアドラーは笑う。
「私が考えているのはイデオロギーの問題なのだが…」
「それを無視させるほどの魅力がうちのMSにあるのかね…?」
洸晴はアドラーの言葉を自分なりに分析して話す。
「当然ですよ…レオパルト(MBT:主力戦車)に手足の生えたようなMSに乗って
いた我々にとっては、浦木と原田のMSは大きな魅力ですよ」
アドラーはさらに言葉を続ける。
「…大きな賭けになりますが…我々が経済だけでなく、政治的に世界を変える
キーパーソンとなりうるチャンスですよ。」
「うむ…」
洸晴は腕組みする…
「よし…前向きに検討しよう」
洸晴は充実した笑みを見せた。
「次のスケジュールがあるのでそろそろ失礼する」
「ゆっくり養生してくれたまえ」
洸晴はアドラーと握手を交わし、病室を出た。
Re: 機動龍騎兵 蒼龍 第23話 - 原作:神無月とし 文:人龍 時宗
2008/03/08 (Sat) 05:28:59
アドラーが一息つくと、次の見舞い客が来た。
「大尉! 失礼します!」
洸が敬礼する。
アドラーもベッドで上半身を起こし、敬礼する。
「大尉、やっとシュミレーションで原田曹長に勝てるようになりました!」
「神電にはまだ勝てませんけど…」
洸の声は弾んでいる。
「そうか…!」
アドラーは洸の成長に驚いた。
「俺は必ず大尉の仇を取りますよ!」
洸の眼が決意に輝く。
「…」
アドラーは洸の成長ぶりを喜びつつも不安を感じた。
洸がパイロットとして成長するという事は、より危険な任務に就くという事で
それだけ死の危険に近づくという事だ…
今、ベッドに居るだけの自分に、洸のために出来る事は何か?
アドラーは考え、そして動いた。
私物入れのロッカーから小さな銀色の箱を取り出し、箱から取り出した長い
リボンの付いた勲章を洸の首にかけた…
「これは…?」
洸は勲章を手にとって見る。
「これは…まさか…?!」
「私の祖父の形見だよ…」
「君にそれを貸そう…27人のドイツの騎士が君に力を貸してくれるだろう…」
アドラーは洸の両肩を掴んで話した。
「これは…たしか…ダイヤモンド剣付柏陽騎士鉄十字章…?!」
「…こんな大切な物を…」
洸は困惑する…
「なーに…レプリカだが予備が私の手元にあるさ…」
アドラーは笑う。
そして表情を変えて真顔になり、洸に問いかける。
「洸…いや…浦木少尉、君は何故パイロットになったんだ?」
洸は即答した。
「MSが好きだからです!」
「…そうか…」
アドラーは目を閉じて少し考えた。
「少尉はルミノソ・ティグレの演説を見ただろう?」
「はい」
洸は応えた。
「どうだ…? 連中は狂っていると思わないか?」
アドラーは続けて問いかける
「は…はい…」
アドラーの意外な問いかけに洸は少し戸惑う。
「戦場で必要なのは冷静な狂気なのだよ…」
「自分の信念のために、敢えて人を傷付け、自分の命を投げ捨てる…」
「おそらく…ルミノソ・ティグレもそんな輩であろう…」
アドラーはそこまで言ってひと呼吸する。
「少尉…君は決意を固めるのだ…ルミノソ・ティグレに負けない固い決意を」
「君の愛する物を守るために…」
アドラーは、洸の肩を掴んでいた手に力を込めた。
「はい!」
洸はしっかりと応えた。
「よし…行ってこい! フィール・グリュック!(武運を祈る!)」
アドラーは洸の肩を叩く。
洸は敬礼した…
機動龍騎兵 蒼龍 第22話 - 原作:神無月とし 文:人龍 時宗
2008/02/11 (Mon) 03:08:21
グレルリア潜水艦内…
ペルツはビデオカメラを構えながら、ヴェーゲルに合図を出す。
「浦木のLANへの侵入、カメラ準備OK!」
「よし…カメラ回せ!!」
ヴェーゲルが怒鳴った。
ペルツがカメラの録画ボタンを押すと、浦木グループのすべてのPCや携帯の
ネットワークがハッキングされ、ヴェーゲルの姿が動画として配信された…
「我々は南米解放戦線「ルミノソ・ティグレ」」
「我々は、今、ここに決起した!」
ヴェーゲルは演説用の小さな机を拳で叩いた。
「我々は、南米、いや、世界の平和と安定のために戦い続けてきた!」
「しかし…今ここに新たな脅威が現れたのだ!」
カメラがズームアウトすると、ヴェーゲルの背後に横たわっている
バイオ四号機が写しだされた…
「見るがいい!」
「この恐ろしい重武装のMSを!」
「浦木は日本の国防軍をそそのかし、強力な軍備を増強させ、日本をまた
軍国主義へと誘導している!」
「そして、続々と南米諸国にも進出し、暴利を貪っている!!」
「我々は「浦木重工」という、死の商人を粛清せねばならない!!」
「コンプレタメンテ ポァウ ラス ペルソナ!!(すべては人々のために!!)」
ヴェーゲルは敬礼した。
そして数秒後、画面は砂嵐になり、ハッキングによるLANジャックが終わった…
「畜生ーーー!!」
「好き勝手な事をぬかしやがってぇぇぇ!!」
洸は浦木重工の休憩室で人目をはばからずに感情をむき出しにして、ドンドンと
テーブルを叩いた。
『うーむ…』
『元中佐が話していた「龍騎兵をめぐる戦い」と、何か関係がありそうだな…』
ケーンは腕組みをして清泉の職員室のTVスクリーンを睨んだ。
「これで私も道化か…」
LANジャックによる演説を終えたヴェーゲルは、ロックでウイスキーをあおる。
「何を仰いますか!」
「これは誰かがやらねばならない事なのです!」
「今ここで血を流さなければ、近い将来もっと多くの人々が苦しむのです!」
ヘヒトが直立不動でヴェーゲルに語る。
「そうですよ大佐!」
「大佐!」
ペルツとロドリゲスも真剣な眼差しでヴェーゲルを見つめる。
「よーし…」
「あらためて貴様等の命、この私が預かる!!」
ヴェーゲルは力強く宣言した…
保守します… - 人龍 時宗(管理人)
2007/12/17 (Mon) 00:19:11
もう年末ですね…
色々と忙しいです…
機動龍騎兵 蒼龍 第21話 - 原作:神無月とし 文:人龍 時宗
2007/10/14 (Sun) 06:20:38
「我々の今後について、すぐに3人の意見は食い違った…」
「ワシはすべてを封印し、世界にできるだけ干渉しない事を主張した」
「浦木は宇宙からのテクノロジーを人類の発展のためだけに使うことを主張した」
「原田は龍騎兵の武力による新たな世界秩序の構築を主張した」
源司は右の拳で左の手のひらを打った。
「原田は言ったのだ…」
「今、この瞬間にも人々は戦い、そして倒れている…」
「龍騎兵があれば、ヒトラーだろうが、スターリンだろうが、トルーマンでさえ
倒す事ができるんだ」
「このセリフはワシと洸明の胸に深く突き刺さったよ…」
「しかし…」
「我々はおそらく龍騎兵の力を正しく使う事が出来ないだろうとワシは思って
いたし、そもそも力によって作られた秩序は力によって破壊されるだけだ…」
源司は目を閉じる。
「そこでワシはひとつ賭けをした」
「ワシの蒼龍と原田の刃龍で決闘したのだ…敗者は勝者に従うという条件でな」
「闘いは白熱し、いつの間にか我々は己の存在のすべてを龍騎兵に懸けていた…」
「そう…命までもな!」
「そしてワシは…激闘の末…我が友を…」
「…」
源司はがっくりとうなだれ、言葉を詰まらせた…
しかし、すぐに自分の話が途中なのに気付き、話を続ける。
「浦木は紅龍を封印し、宇宙からのテクノロジーのほんの一部を使って浦木重工を
立ち上げた」
「ワシは蒼龍を封印し、浦木とも協力して学校法人を立ち上げた」
「…原田は…刃龍と共に海底で眠っていたが戦後にサルベージされて機械島に
封印されている…」
「ワシの昔話はここまでだ…」
源司は瓶を垂直に立てて底に残っていた酒を飲む。
「貴重なお話、感謝いたします」
ケーンは立ち上がって礼を言った。
「ん…君は…ワシに他に何か言いたい事があるのではないのかね?」
源司はケーンの腹を探るセリフを投げかける。
「いえ…」
「私は…元中佐が超常的な力を持つのにふさわしいと思っただけです」
ケーンはあっさりと答えた。
「どうも話が回りくどくていかんなぁ…」
源司の眼光がケーンを鋭く射る。
「ワシを倒して力を我が物にするのではないのかね?」
「今はその必要がありませんし…元中佐と一戦交えるのであれば、
無傷では済まないでしょうね」
ケーンは引き続きあっさりと答えた。
「では…そろそろこの辺で失礼させていただきます」
ケーンは敬礼した。
「ところで…最後にひとつ聞いていいかな?」
源司はケーンを引き止めた。
「さっきのワシの剣撃をどうやってかわしたんだね?」
「前に出てかわしたんですよ」
ケーンはほんの一瞬だけ不敵な笑みを浮かべた。
去って行くケーンの後ろ姿に源司は呼びかけた。
「これから、龍騎兵をめぐる戦いが起きるであろう…」
「傍観者でもかまわないから君には見届けてほしい…」
機動龍騎兵 蒼龍 第20話 - 原作:神無月とし 文:人龍 時宗
2007/10/14 (Sun) 06:19:49
「さて…何から話そうか…」
源司は泉の湧き水で冷やした生酒の瓶をケーンに手渡した。
「いただきます」
ケーンは酒を味わうよりも、次の源司の言葉に神経を集中していたが、
それでも酒の爽やかな味わいが喉からケーンの緊張をほぐしてゆく。
「前大戦の事を知っておるかな?」
源司は話を進めた。
「ええ、今から約60年ほど前に世界が連合と枢軸に分かれて争った戦争ですね」
ケーンはこの世界に来て間もないが、書物と映像を貪欲に知識として
頭脳に詰め込んでいた。
「そうだ…」
「当時、ワシとその2本の軍刀の持ち主である、浦木 洸明、原田 刃の三人は、
帝国海軍の武官として、ドイツ帝国に駐在していた」
「そして…帰国直前にゲシュタポに追われていた、ユダヤ人科学者
イゼック博士と出会い、我々は彼をかくまって、潜水艦で帰国した…」
「帰国した我々は…」
源司は海を指差した。
「あそこに小さな島があるのが見えるかね?」
「ええ…」
ケーンは目をこらして海に浮かぶ小さな島を見つけ出した。
「あの島は、機械島といって、今は浦木重工の研究施設になっておるが、
当時は海軍の研究施設だった」
「そこで我々とイゼック博士は研究に励んだ」
「イゼック博士の天才ぶりについては、その弟子である識部教授を見れば君にも
判るだろう…」
「君は識部教授の事を良く知っているのだろう?」
「ええ…今は識部教授の家に居候です」
ケーンは驚いた。
識部教授の意外な背景に。
「イゼック博士は、当時、鉄騎兵と呼ばれていた初期のMSの開発に熱心だった…」
「そして、日本の工業力では量産不可能ではあったが、世界水準を越える鉄騎兵の
開発に成功したのだ」
「…さて…ここからが君の本当に聞きたい話だ…」
源司はケーンを見すえる。
「ある夜の事、島に何かが墜落した…」
「我々が見に行くと、それは無人の宇宙船だったのだ!」
「!…」
ケーンの表情が変わった。
「我々は宇宙船から色々な物資を回収し、イゼック博士はそれらを分析して、
開発中の鉄騎兵に利用した」
「そして…完成したのが、機動龍騎兵と呼ばれる蒼龍、紅龍、刃龍の3騎だ」
「だが…残念な事にイゼック博士は米軍の艦爆の攻撃で死んでしまった…」
「我々は怒り、そして悲しんだ…」
「研究の日々で我々とイゼック博士はお互いに友情と畏敬の念を抱いてたんだろうな…」
「怒りと復讐に燃えた我々は出撃し、3騎の発電機を直結させて最大出力の
荷電粒子砲を敵機動部隊に照射した…」
「…その一撃で…空母13隻、戦艦7隻、艦載機900機の敵1個機動部隊を完全に
我々は撃破した」
源司の拳は固く握られ、かすかに震えている。
「核兵器並み…いや、それ以上の攻撃力ではないですか!」
ケーンは思わず声を上げた。
「そうだ…我々は核以上の戦略兵器を手にしてしまったのだ…」
「そこで…我々が次に何を考えたか解るかね?」
源司はケーンを試すような質問をぶつける。
「当然、大戦略というか超戦略的な事を考えますね」
「ありきたりな言い方をすれば、力による世界支配も可能でしょう」
ここでケーンはいったん言葉を止めて、少し慎重に言葉を選んだ。
「…元中佐とご戦友は、人類の未来についても考えられたのではないでしょうかね?」
「宇宙からもたらされたテクノロジーによって、元中佐とご戦友が人類の平均から
一歩進んだ思考をされたのでは…」
ケーンは一国の宰相であったし、ヴァンガードでもある。
源司の言いたい事がなんとなく自分の体験から理解できた。
「ふむ…鋭いな」
源司は感嘆した。
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